駐車スペースの奥、格子の先に住まい。ここがリノベーションした建物とは、言われなければ分からないだろう。通路を通って玄関から中へ。すると、驚くほど明るく伸びやかなLDKが広がっている。あらわしになった梁が、ここで重ねられた時間を留めている。
古い家にあった麻の葉模様を組み合わせた欄間。新しい壁に取り入れてアクセントに
住まいをつなげ、世帯をつなげるリノベーション
かつて工場だった空間を住まいに。母屋とつながる
二世帯住宅は「ほどよい距離感」がテーマになった。
ご両親の家に、二世帯で住んでいたK家。お子さんが大きくなり、職人だったお父さんが仕事をやめるタイミングで、隣接していた工場を住まいにすることになった。母屋とつなげ、「ほどよい距離感」を形にした家づくり。河内さんと、住み手のKさんに振り返ってもらった。
河内 太一(カワウチケンチク・以下河) 前の家では、玄関もキッチンもお風呂も一緒。仲のいいいご家族で、お子さんたちがおじいちゃんおばあちゃんが大好きというのが伝わってきたので、行ったり来たりが気軽にできる「付かず離れずの距離感」がテーマになりました。
Kさん(施主・以下K) 子どもたちは、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に寝たり、お風呂も入ることもある。「今日はあっち」とか選べるようにしたいと思っていました。怒られたら逃げるとかね(笑)
河 工場を住まいにしてつなげると、間口は狭いけれど奥行きが深い長屋のような建物になる。そこで、共有のお風呂を中心に、それぞれの世帯のキッチン、リビング、玄関、が左右に並ぶように、シンプルにレイアウトしました。
K 以前のくらい向上を知っているので、光が入るのかなと思っていたんですが、すごく明るい。
河 確かに日照条件は良くありません。ただ、朝日がすごく入る。それを生かそうと考えたら、必然的にこの間取りに落ち着いたというのもあります。
K 古い梁を表に出してもらったんですが、それも良かった。
河 構造がしっかりしていたので、残して生かそうと。いったん柱と梁だけにして、新たに壁や床を施工していきましたが、梁はいい表情になっていたので、あえてあらわにしました。古い木材が入ることで、空間にも重みも出ますね。
設計、現場を知るからできたリノベーション
K 建具職人だった義父も言っていましたが、更地にイチから建てるより大変だと。
河 リノベーションの場合、どこを残せるか、切っていいところはどこかなど、構造を理解していないと判断できないことが多いんです。
K 河内さんは職人として信頼できる、任せて大丈夫だというところから始まったので、その点は安心していました。
河 大工としての現場経験、設計の知識。壊すところから建てるところまで、自分の持っている全てを発揮しました。仕上げについては、自然素材を生かした家づくりをしていますが、Kさんとは「無垢の木をできるだけ使いたい」というところが共有できたので、スムーズでした。
K 木っていいなと思っていたんですが、子どもがアレルギーを持っていることもあって、河内さんに相談したら「うちもそうなんです」と親身になってくれて。
河 新建材はなるべく使わない、を基本に、床はすべて無垢の松。キッチンやTVのカウンターなどにもスギの一枚板を採用しました。お子さんたちが寝転んだり、遊んだりしても安心です。
K この座卓もスギで作ってもらいました。大きくて厚みもあって、すごくいい。あと、ダイニングキッチンの天井には、キャットウォークを付けてもらったんですが、おかげで、洗濯物がよく乾きます。
河 1階の暖気を2階に上げたくて提案しました。キャットウォークのそばに物干しスペースを配置すれば無駄がないとも思って。
K 家の中は、エアコン一台ですごく快適です。特に、冬の暖かさには驚きました。親世帯の部屋に行くと、本当に申し訳ないくらい寒くて、こんなに違うんだと。それに床が気持ちいいから、子どもたちもみんないつも裸足。梅雨の時期もサラサラです。
河 柱と梁だけにした後、断熱材を入れ、サッシは断熱効果の高い樹脂を採用しました。
K リノベーションでしたから、どこまでできるのかとも思っていましたが、デザインだけではなくて、快適さもここまで変えることができるんだと、改めてお願いしてよかったと思っています。